大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和32年(う)245号 判決

所謂「もや買い」とは、遊戯場に於て通称パチンコなる遊戯を行い賞品(煙草、歯ブラシ等)を獲得した者から、その獲得した賞品を相当の対価で買取り、これを第三者(通常の場合該遊戯場の経営者)に転売し、買値と売値との差額を自己の収益とする一種の営利行為を指称するものであり、従つて特別事由の認むべきものがない限り、斯る行為それ自体は、必ずしも所論のように賭博罪の共犯又は従犯を以て、これを目すべきでない。被告人の着服した金員が、「もや買い」の資金に充てるため交付された金員であつたことは、まことに所論の通りであるが、前叙のように特別事由の認むべきものがない限り、単にそれが「もや買い」の資金であると言うだけの理由では、これを採り上げて民法第七百八条に定める「不法原因の為の給付」に該当すると断定するを得ない。しかのみならず、仮に「もや買い」の資金の交付が、民法上「不法原因の為の給付」に該当するとしても、そのような給付をした者は、民法上、その返還を請求することが出来ないだけのことであつて、給付の目的物件に対する自己の所有権を、これによつて直ちに喪失した訳ではない。そうだとすれば、給付の受領者が、委託された金員を擅に領得するに於ては、自己の占有する他人の物を横領したものとして、該所為は刑法第二百五十二条の罪を構成すること、勿論である。所謂「もや買い」の資金として交付された金員を、不法に領得しても犯罪を構成しないとする所論は、叙上いずれの観点よりするも、到底採用するを得ない。

(裁判長裁判官 山田義盛 裁判官 沢田哲夫 裁判官 辻三雄)

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